私は文化系・学術系の学びが好きで、興味のあるテーマがあればセミナーやシンポジウムにも参加しています。
今回は、9月5日(土)に本郷にある順天堂医院で開催された、 「小線源治療における看護のちから」というイベントに参加してきました。

名前だけ見るとなかなか専門的ですが、今回は講義だけでなく、実際のRALS室の見学までできる内容。普段なかなか見る機会のない治療の現場を知ることができたので、備忘録として残しておこうと思います。
そもそも「小線源治療」とは?
まずは事前知識から。
がんに対する放射線治療には、大きく分けると、体の外から放射線を当てる 外部照射 と、体の中や腫瘍のすぐ近くに放射線源を置いて照射する 内部照射(腔内照射)があります。
今回参加したイベントのテーマは、後者の内部照射(腔内照射)にあたる小線源治療。なかでも、子宮頸がんなどの治療で使われる RALS(ラルス)と、そこで行われる看護が中心でした。

まずは、医師から子宮頸がんの放射線治療について説明がありました。
子宮頸がんの放射線治療では、体の外から放射線を当てる外部照射だけでなく、腫瘍の近くから直接放射線を当てる腔内照射(病期に関係なく局所制御率が高い)が重要になるとのこと。
実際にどのような器具を使い、どのように治療が行われるのか。模型を使ったデモンストレーションもありました。
患者さんとして治療を受ける場合、実際の処置中に自分の体で何が行われているのかを見ることはできません。私も今回初めて手技を目の前で見て、
「こういうことをしているのか」
と、具体的にイメージをもつことができました。
ところで、RALS(ラルス)って何?
そもそも、RALS(ラルス)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。私は今回のイベントに参加するまで、まったく知りませんでした。
RALSとは、Remote Afterloading System(遠隔操作式後装填法)の略です。
名前だけ見ると難しいですが、仕組みをかなり簡単にすると、先に体内へ専用の器具(アプリケータ)を入れ、そのあと放射線を出す小さな線源を遠隔操作で送り込む治療 です。
子宮頸がんの場合は、腟や子宮内などにアプリケータを挿入します。その位置をCTなどで確認し、腫瘍や周囲の臓器との位置関係をもとに治療計画を作成。照射が始まると、装置の中に保管されている放射線源がアプリケータ内へ移動し、あらかじめ計算された位置で止まりながら放射線を当てていきます。照射が終われば、線源は再び装置の中へ戻ります。
つまり、放射線を出すもの自体を腫瘍のすぐ近くまで持っていけるのが特徴です。流れだけをかなり単純化すると、
アプリケータを挿入
↓
CTなどで位置を確認
↓
治療計画を作成
↓
医療スタッフが治療室から退出
↓
遠隔操作で線源を送り照射
↓
線源を装置へ回収
という形です。
名前に「Remote(遠隔)」と付いているのは、医療者が治療室の外から装置を操作するため。かつては医療者が放射線源を直接扱う方法もありましたが、RALSでは装置から自動的に線源を送り込めるため、医療従事者の被ばくを抑えながら治療できる仕組みになっています。
今回の主役は「治療」ではなく「看護」
ここまでRALSについて長々と説明しましたが、今回のイベントの主役は治療手技ではありません。テーマは、その名の通り、「小線源治療における看護のちから」です。
がんと診断された患者さんには、さまざまな不安があります。
- 死ぬかもしれない…という漠然とした恐怖
- 治療は痛いのか
- どんな副作用があるのか
- この先どうなるのか
さらに今は、インターネットを検索すれば大量の情報が出てきます。便利な一方で、どの情報が自分に当てはまるのか分からず、余計に不安になってしまうこともあります。医療者側も、一人ひとりの患者さんが抱えている不安や症状を、すべて拾い切れるわけではありません。
その 「隙間」を見つけて埋めていくことも、看護の大きな役割 なのだと感じました。
RALSならではの難しさ
とはいえ、ここまでなら一般的ながん看護にも当てはまりそうです。
では、RALSでは何が違うのでしょうか。
一つ印象に残ったのが、治療を受けられる施設が限られていること でした。診断を受けた病院でそのまま治療できるとは限らず、RALSを行える別の病院へ紹介されることもあります。そうなると重要になるのが、病院と病院の間での情報共有です。
- 患者さんがこれまでどのような説明を受けてきたのか
- 何を不安に感じているのか
- どのような症状があるのか
- どこまで理解できているのか
治療する場所が変わっても、患者さんへの支援まで途切れさせない。今回の講義では、そんな「つなぐ看護」の重要性 についても触れられていました。
また、患者さん自身が治療を理解し、
「これなら治療を受けられそう」
と思えるようにするための説明や声かけ、環境づくりにも、さまざまな工夫があることを知りました。
実際にRALS室を見学してみた
そして最後に、実際のRALS室を見学させてもらいました。中に入った瞬間の感想は、
「手術室じゃん……」
でした。医療機器が並び、独特の閉塞感。ましてや、そのとき患者さんはすでに「がん」と診断され、これから治療を受けようとしているわけです。
私は見学するだけなので、「すごい設備だな」とのんきに眺めていられます。でも、自分が患者としてこの台に乗る立場だったら。同じ景色でも、まったく違って見えるはずです。
「寄り添う」だけではない看護
今回参加して、一番印象が変わったのはここでした。看護というと、患者さんの気持ちに寄り添う仕事 というイメージを持つ人も多いと思います。
もちろん、それも大切です。でも、実際にはそれだけではありませんでした。
- 患者さんが安全に治療を受けられるよう環境・体制を整える
- 必要な物品を用意する
- 治療中の苦痛や不安をできるだけ減らす
- 患者さんの小さな変化を拾う
- 次の治療へつながるよう記録を残す
- 職種や施設が変わっても情報が途切れないよう共有する
そして、患者さん自身が安心して治療を続けられるよう支える。そうした一つひとつが重なって、初めて治療そのものが成立しているのだと思います。
がん宣告を受けてから治療に至るまで、患者さんが抱える不安や恐怖は、外から想像する以上に大きなものです。そんな状況の中で、
物理的な「安全」と、心理的な「安心」の両方を支える
今回の「小線源治療における看護のちから」というタイトルは、講義と見学が終わったあとに改めて見ると、最初よりずっと重みのある言葉に感じました。
一般の参加者として見学した私は、そんな全方位から治療を支えている看護の仕事に、改めて尊敬する気持ちが生まれました。
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